星座や星を探すのに便利なのが『星座早見盤』です。ただ、それだけではないいろいろな使い方がありますので、ここで紹介しましょう。(掲示している星座早見盤は、札幌市青少年科学館で販売している「札幌仕様」のものです。)
星座早見盤の作られ方
星座早見盤は基本的に星や星座を記した円盤の上に、観測地から見られる範囲=窓を示した円盤を重ねています。円盤の中心は『天の北極』で、窓の円盤は、これを中心に自由に回転させることができます。この早見盤程度の精度であれば、その場所に『北極星』があると考えて良いです。(つまり、星が天の北極を中心に回る様子を、回転円盤の中心とすることで実現しているわけです。)
水色の円盤には、見える範囲を示す透明になっている窓があり、その形は、観測値の緯度によって変わります。北極では「円」、赤道では「半円」となります。札幌は北緯43度なので、ほぼ楕円に見えます。逆にこの楕円形のような窓以外のところにある星は、地平線下になり見ることはできません。
窓の円盤の透明部分には方角や南北を結ぶ直線で表されている『子午線』が描いてあります。子午線に重なっている星があれば、その星はそこを通過しつつある星と考えることができます。南の空であれば「南中」、北の空であれば「北中」となります。南中時に、星座や天体は最も高い位置に来ることになります。そのため、札幌ではさそり座等の南天低い星座は見づらくなります。(南に行くほど、南の地平線は下がり、相対的にさそり座の高さは高くなっていきます。)
「南」と書いてある部分を拡大したのが、左の写真です。まぎらわしくも、時刻らしい数字が、白い円盤にも水色の円盤にも書かれています。普段使うのは、水色側の時刻で、これが「観測時刻」を表しています。一方、白い円盤の時刻は、天体の位置を表す「赤経時刻」なのです。もし、新しい天体が現れ、その赤経と赤緯が分かれば、これらを手がかりに印を付けると、その天体が見やすい時間帯が簡単に分かりますが、とりあえずは無視して構わないでしょう。
白い円盤の周辺には、「月名」と「日付」が記してあります。これが「観測月日」となります。日付が2日おきになっているのが分かるでしょうか?これは単に毎日を刻むと混み入ってしまい見にくくなるため省略したものです。そのため、記載されていない日付の場合には、「記載されている日付の間」を利用します。
この日付は、1年(365日)で1周するように刻んであります。というのも、地球はこの間に1周し、同じ月日であればほとんど同じ星空が再現されるからです。(別な表現をすると、星空は毎日約4分ほど早く巡り、また1周は360度ですから、毎日1度弱星空がずれていくことになります。)
こうして、白い円盤の「観測月日」と水色の円盤の「観測時刻」がそろいました。後は、その両者を一致させると、希望する月日時の星空の様子が、透明窓をとおしてうかがうことができるわけです。上の写真では、8月4日の20時となっています。さそり座のしっぽが真南を通過しているのが分かるでしょう。(札幌では、この夏を代表する星座は、上にも書きましたように、南の地平線ぎりぎりのところを通過するため、その全体を見るには見晴らしの良い場所を選ぶ必要があります。)
さて、同じ状態で、他の時刻と月日が一致する場所を見てみましょう。すると、「7月20日21時」や「8月20日19時」などが見つかるでしょう。つまり、これらの月日時の星空は「8月4日20時」のものと同じものなのです。こうして、数ヶ月違っていても、同じ星空が見られる月日時を探すことができます。
星座早見盤の見方
透明の窓の周辺には東西南北の地平線、と書かれています。星座や星を探すに当たっては、自分の向いている方角の地平線がちょうど下になるように、早見盤全体を回転させます。(人の目が見える範囲はあまり広くありません。そのため、窓全体の星空をながめるのは不可能なのです。そこで、注目している方角が主になるように、早見盤全体を持ちかえるのです。)上の写真では、たまたま観測者の向いている方角が南であるような場合です。
南北の子午線と東西の曲線が交わる点が『天頂』で、頭の真上になります。この高さを、「高度90度」ともいいます。地平線は「高度0度」なので、透明窓の中に描かれている小さな楕円線は、高度30度を表しています。天体は時刻と共に高度・方位が変わっていきます。これらの線を手がかりに、調べてみましょう。
見る方角が変わったら
左は、東の方向を向いているときの星座早見盤です。このように、観察する人がどの方角を向いているかで、早見盤の地平線の方角も変えるよう持ち直します。この時刻では、東の地平線からペガスス座やアンドロメダ座、あるいはみずがめ座が昇りつつあるのが分かるでしょう。
同様に、向きを変えたときには、それぞれの地平線の部分が下になるように持ちかえて使います。
太陽
ところで、みずがめ座の辺りに紺色の一点鎖線が描かれています。これは「黄道」で太陽の通り道になります。その側に1/1、11、21、2/1、11、21などと記されています。これは、黄道上の太陽の位置を教えてくれています。紺色の点は、5日ごとの太陽の位置を表しているわけです。上図の場合、3月3日辺りが東側の地平線と交差しています。つまり、この月日の太陽は、東の地平線にあるわけですから、その月日の時刻を調べると「日の出時刻」を知ることができます。今の場合、3月3日が示す時刻を見ると「6時8分」くらいになります。これが、「3月3日の日の出時刻」ということになるわけです。(実際に日の出時刻を計算すると、6時8分となります。たまたま同じ値ですが、早見盤の制作精度により、数分の誤差はあります。
同様に、西の地平線に接する時刻を調べれば「日没時刻」が、子午線にかかる時刻を調べれば「南中時刻」が、それぞれ求めることができます。