電線などの細長いものに強い風が当たるとき、「ヒューヒュー」という音が出るときがあります。この音は「エオルスの音」と呼ばれ、電線の風下にできる「カルマンの渦(列)」とよばれる渦巻群が電線の振動を促し、音を起こしています。風速が大きいほど振動数も大きく、音は高くなります。
水中にある柱に流れが当たると、その後ろに流れが巻きこまれて渦ができます。渦は柱の右側と左側にかわるがわるでき、流れよりも少し遅い速さで流されていきます。渦のでき方は流れの速さ、柱の太さや形、流れるものの粘り気によって変わってきます。
《エオルス音》
細い棒に強い空気の流れが当たるときに発生する空気力学的な音で、送電線や細い木の枝に風が当たり、電線の背後にカルマン渦が生じて発生する音で知られています。エオルス音aeolian soundsは古代ギリシアの風神アイオロスAeolusにちなんで名付けられました。
《カルマン》
(1881〜1963)の応用力学者。1911年カルマン渦の理論を立てたほか、境界層理論、等方性乱流理論、高速気流理論、飛行機翼理論など、流体力学、航空力学、弾性論の方向にもすぐれた業績を残しました。
《カルマンの渦(列)》
風が強く吹くと、電線がピューピューと鳴るのは、渦が音を出すのではなく、渦により電線が振動するためです。電線の断面は円形で、風が当たると、風下側に渦ができます。渦のところの圧力が下がり、電線が渦の方へ引き付けられてしまいます。渦は、電線の上下でかわるがわるでき、そのため電線が振動して音が出ます。