ボールははずむものといった常識をやぶり、最近まったくはねないゴムボールがおもちゃ店などで売られています。
はね返る力(反発力)が非常に小さい衝撃吸収ゴムという、新しく開発されたゴム材料で作られたボールです。
このゴムをスポーツシューズの靴底に使うと、地面からの衝撃を吸収してくれるし、床材に使うと物を落としてもはね返りが少なく、飛び散らないので大変便利です。
一般にゴムは、(1)反発する力(反発弾性)が大きい(2)力を加えてもすばやく元にもどる(形状復元性)、という2つの性質を持っています。
自動車のタイヤや防振ゴム(振動を抑える働きをするゴム)、またゴムひもなど、みんなこの便利な性質を利用したものです。
衝撃吸収ゴムは、この2つの性質のうち、形状復元性はそのままで、反発弾性だけが普通のゴムより低くなるように開発されたものなのです。
では、どうしてはずまないのでしょうか。
そのひみつは、「衝撃を熱に変えている」からなのです。
ちょっとむずかしい言い方をすれば、「外から加えられた衝撃エネルギーを、効率よく熱エネルギーに変えて反発力を小さく(減衰)させている」のです。
したがって、はずまないゴムボールを床の上に落とすと、ボールの温度は、落とす前よりわずかに上昇します。(ただし、手でさわったぐらいではわかりません。)
この衝撃吸収ゴムは、最初はバッティングマシンのテストポール材料として開発されたものですが、今後、騒音・振動防止など様々な産業分野での用途が期待されています。
[資料提供:内外ゴム(株)]