声をはなれた人に伝える方法には、どのようなものがあるでしょうか?
(1)伝声管:伝声管は管の中の声がそのまま伝わっていきます。
(2)糸でんわ:みなさんも遊んだことがある糸でんわは、声が“ふるえ”となって糸を伝わり、再び声に戻ります。
(3)電話:私たちが使っている電話は、声を電気に変えて電線に送り、再び声の形に戻したものが聞こえてくるのです。
音が進む速さは1秒間に340mですが、電気は光と同じく1秒間に30万km(地球を7回り半)も進みます。例えば、札幌から約2000km離れた鹿児島でも、電気で声を送る電話では、まるで目の前にいるように話ができます。
しかし、音のままで送るとすると、こちらが話した声が相手に届くまでには約100分もかかってしまう計算になります。
それでは、この電話のしくみはどうなっているのでしょうか?
電話は、音を電気に変える送話器と、送られた電気を音に変える受話器からできています。
私たちが送話器に向かって話をすると、その声が薄い振動板をふるわせます。すると、振動板のうしろにある炭素の粉は、強く押されたり弱く押されたりします。
この炭素の粉には電流が流してあり、強く押すほど大きな電流が流れます。そのため、振動板のふるえが電流の大小に変わり、電線の中を伝わっていくのです。
一方、受話器は電磁石と振動板からできていて、振動板には鉄片が付いています。
電線を伝わってきた電流は、電磁石に流れます。電磁石には電流の大きさによって磁力が変わる性質があるので、鉄片は電流の大小によって強く引かれたり、弱く引かれたりします。そのため振動板もふるえ、電流の大小が音となって聞こえてくるのです。
電話は、1876年アメリカのベルによって発明されました。しかし、彼の発明した電話は、音を電気に変える働きが弱く、相手の声がよく聞こえませんでした。そこで、エジソンが送話器に炭素の粉を使うものに改良したのです。
日本では、1890年に東京と横浜に電話がひかれましたが、その年は東京でコレラが大流行しました。そのため、「遠くはなれた人の声をこんなに早く伝えるのだから、きっと風邪や病気もいっしょに伝えてしまうにちがいない」と思い込み、電話がかかってくると家から逃げてしまった人もいたということです。
それから約100年たった現在では、送話器に小さくて軽いコンデンサーマイクを使った電話も登場しています。
《電話の父》
アレクサンダー・グラハム・ベルは1847年にイギリスに生まれました。そして1871年にアメリカに渡り、ボストンにろうあ者のための学校を開きました。
彼は音声学を研究し、遠くはなれた人と会話ができる機械を作ろうとしました。これが電話の発明につながったのです。ベルはこの発明によって“電話の父"と呼ばれています。
しかし、ベルの電話では、送話器にも受話器とまったく同じものを用いたため、声を電流の強弱に変える効率が悪く、あまり遠くまで伝えることができませんでした。