直接人間の目で判別できない小さい物を見るのに、光学顕微鏡を使いますが、どんなに精度の高いレンズを組み合わせても、その拡大能力には限界があります。それは、光を使っているため、光の波長より短いものを観察すると、光が回りこんで重なり、像がぼやけてしまうからです。
そのため、光学顕微鏡では最も小さいもので0.2μm(マイクロメートル)程度までしか見ることができません。
〔1μmは1mmの1,000分の1〕
そこで、光より波長の短い電子の束(電子線)を使った電子顕微鏡が誕生しました。
光学顕微鏡が約2,000倍まで拡大することができるのに対して、電子顕微鏡は約100万倍まで拡大することができ、分子や原子を観察するレベルまできています。
電子顕微鏡には、通り抜けた電子線を見るしくみの透過型と、はね返った電子線を見る走査型があります。
では、電子顕微鏡のしくみはどうなっているのでしょう?
電子顕微鏡のしくみは光学顕微鏡とほぼ同じしくみになっています。
しかし、光を使っていないのでガラスのレンズはありません。
電子顕微鏡には、ガラスのレンズと同じはたらきをする電子レンズというものがあります。
電子レンズは電磁石でできており、磁界をつくります。
これは、マイナスの電気を帯びた電子がここを通るときに曲がる性質を利用したものです。
電子は、そのままでは見ることができないので、通り抜けた電子を蛍光板に当て、光った像を見ています。
電子顕微鏡の中は、真空になっており、電子の動きを空気中の分子にじゃまされないようにしています。
《電子顕微鏡の像がカラーで見えないわけ》
ものがカラーで見えるのは、ものに可視光線が当たると、特定の色の光を吸収・反射するためです。
例えば、赤いクレヨンは赤い色の光だけを反射し、他の色の光はすべて吸収してしまうため赤く見えます。
色というのは、光のもっている独特な性質のひとつなのです。
電子顕微鏡は、色のもととなる可視光線のかわりに電子線を使っているので、より小さい物を見ることができますが、標本の色を見ることはできないのです。
資料提供:日本電子(株)
資料提供:(株)ニコン