一枚のペラペラのプラスチックフィルムから音楽が流れてくる。
「スピーカーといえば四角い箱」と思いがちですが、こんな一風変わった平面スピーカーも現在は出まわっています。
このプラスチックフィルムのスピーカーには、力を加えるとフィルムの両面に電圧が発生し、その逆に電圧を加えるとフィルムが伸びたり、縮んだりする、特殊なプラスチックが使われています。
この現象をピエゾ(圧電)効果といい、このような性質をもつフィルムをピエゾフィルムといいます。(「ピエゾ」とは、ギリシア語で「圧する」という意味。)
水晶や電気石は、古くからピエゾ効果があることが知られていて、ピエゾ効果の高いチタン酸バリウムなどは、ガスコンロや電子ライターの点火部などに利用されています。
しかし、これらのピエゾ材料は硬くてもろく、加工しにくいという欠点がありました。
その点プラスチックの場合は、「薄く、軽く、どんな形状にも加工できる」という特徴があります。
1枚のフィルムを図のようにかまぼこ型にし、両はじを固定して電圧をかけると、電圧の向きによってフィルムが前後に振動します。
これにマイクをつなぐと、磁石とコイルのいらないフィルム1枚のスピーカーとして働きます。
また、2枚のピエゾフィルムを一方が伸び、一方が縮むような構造に接着すると、電圧の向きを変えることで自由に曲げる(動かす)ことができます。
ピエゾフィルムは、振動・衝撃を加えると電圧を生じるという性質を利用して、振動・圧力センサーなどに使われています。
また、熱線(赤外線)に対しても同様に電圧を生じることから、火災報知器などへの利用が考えられています。
《力を加えると電気が起きるのはなぜ?》
食塩[NaCl]はナトリウムイオン[Na+]と塩素イオン[Cl-]からできていることは知っていますね。このように電気(電荷)を持った粒(イオン)からできている物質をイオン結合物質と呼んでいます。
ただし、食塩を食べてもピリッとはしません。
これは、プラスとマイナスがちょうどつりあっているからです。なんらかの方法でプラスとマイナスを別々にすることができれば、電気が取り出せるかもしれないということは想像がつきますね。
一般に、力を加えてイオン結合物質をひずませると、プラスとマイナスの配列にゆがみが生じて、ある種のものでは電気(電圧)が発生します。力を加えると電気が起こるので、このような物質を圧電体(ピエゾ素子)と呼んでいます。
ガスコンロや電子ライターで火をつけるとき、カチッという音がして、火花が飛びガスに点火しますね。この火花は、パネの力でおもりを圧電体にぶつけることによって生じているのです。
[資料提供:呉羽化学工業(株)]