親から似た子どもが生まれるのはなぜ?

(1)エンドウ豆がこのナゾを解いた—メンデルの法則

みなさんは、“お父さんにそっくりだね"とか“お母さんにウリ二つだね”と言われたことはありませんか。親と子は、顔の形ばかりではなく、身長やからだの格好などもよく似ています。

 

このように「親の顔形や血液型などの特徴が、子供にうけつがれていくこと」を遺伝といい、それらの情報を正確に伝えていくのが遺伝子と言われるものです。

 

では、わたしたちの顔がお父さんに似るか、お母さんに似るかは、どのようにして決まるのでしょうか。

 

この疑問を解き明かしたのがオーストリアの牧師で、植物学者でもあったメンデルでした。

 

メンデルは、実験用にさまざまな特徴を持つエンドウ豆を購入し、それぞれ掛け合わせ、子供や孫にどんな特徴が現れるかを研究しました。

 

その結果メンデルは、親の特徴を伝える遺伝子には子供に現れやすいもの(優性遺伝子)と現れにくいもの(劣性遺伝子)があり、両親から優性と劣性の2種類の遺伝子をもらった子供には、優性の特徴だけが現れることを発見したのでした。

 

メンデルは実に8年もの間、根気よくエンドウ豆の栽培を続け、1866年、この遺伝のきまりをまとめました。

 

発表当時、その価値は誰にも認められませんでした。しかし、メンデルの死後、他の科学者たちによってその正しさが確かめられ、このメンデルの偉業が基礎となって遣伝学は一層進歩していきました。

 

【遺伝のしくみ】

遺伝のしくみ

 

(2)親からうけつぐ人体設計図—DNA

それでは、お父さんやお母さんの特徴を伝える遺伝子の正体は、どんなものなのでしょうか。私たちを例にして考えてみましょう。

 

私たちのからだは、さまざまな機能を持つおよそ60兆個もの細胞でできています。その大きさは、わずか300分の1ミリメートルほどであり、その中にはどんなハイテク工場もかなわない精巧なシステムが組み込まれているのです。

 

それでは、この小さな細胞をのぞいてみましょう。

 

実は遺伝の秘密は、細胞の中の核というところに隠されているのです。

 

この核の中には染色体と呼ばれるものが入っています。人間の場合、1つの細胞の中に46本の染色体があって、2本1組の対になっています。

この染色体は、ひとつの長いDNA(デオキシリボ核酸)という物質でできていて、これが遺伝子の正体なのです。

 

このDNAには、からだを形づくる様々な情報がぎっしりと詰まっていて、いわば人体の設計図のようなものなのです。

 

その人体設計図は、生殖をとおして親から子供へと代々伝えられていくのです。

 

私たちのからだは、母親のからだの中で作られた卵子と父親のからだの中で作られた精子がくっついてできた、たった一個の受精卵が始まりです。

 

受精前の卵子と精子は、普通の細胞と違い染色体の数が半分の23本しかなく、両方がくっつくことによって元の46本になり、1つの細胞をつくるのです。

 

同時に、染色体上のDNAも母親と父親の両方から半分ずつ子供に伝わることになり、当然、親と子供は似たところが多くなるわけです。

 

 

《犯人を割り出すDNA鑑定》

密室殺人事件。完全に迷宮入りと思われた事件が、現場に残されたわずか数本の髪の毛から犯人を逮捕"こんな内容の推理小説を読んだことはありませんか。実は、この小説の中にDNA鑑定が登場します。

 

遺伝子の正体であるDNAは、細長いらせん状のはしごのような構造をしていて、人それぞれによって成分の配列や鎖の長さがきまっています。

 

したがって、事件現場に残された髪の毛から取り出したDNAと犯人と思われる人のDNAを比べることにより、犯人を割り出すことができるのです。

 

また、DNA鑑定は、親子の関係を調べるときにも大変役立っています。

 

DNAは一般に血液から取り出しますが、毛髪などからも抽出することができ、わずか1、2本の髪の毛から犯人を見つけ出すヒントが得られるなどという芸当もできてしまうのです。

 

DNAを調べるには、まず「制限酵素」という“はさみ"を使ってDNAを細かく切ります。次に、そのDNAのかけらをゼリーのようなものの中に入れて、電圧をかけると、DNAがプラス極側に移動し、このかけらの大きさの違いによってバーコードのような模様を生じます(電気泳動法)。

 

現場に残された犯人の髪の毛などから取り出したDNAと容疑者のDNAの模様を比べ、真犯人ならそのパターンがきれいに一致します。

 

また、親子鑑定では、実の子供であれば、そのパターンが必ず父親か母親のどちらか一方に一致します。

 



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