晴れた夜空には、数えきれないたくさんの星が、ひかりかがやいています。これらの星を望遠鏡でながめていると、いつのまにか視野の中からにげて見えなくなってしまいます。
望遠鏡の視野の中から、星が姿を消してしまうのは、どうしてなのでしょう。
昔の人は、太陽や月が東の空から昇り、南の空を通って西の空に沈むようすなどを見て、星の方が夜空を動いていると考えていたようです。(天動説)
しかし、星が動いているのではなく、地球がコマのように回っている(自転)にちがいないと主張する学者もいました(地動説)。望遠鏡で、太陽や月、惑星などを観察すると、みな自転していたからです。
さて、地球の自転を説明するには、その証拠をみつけださなければなりません。これを実験で証明することは、とてもむずかしかったのです。
自転を確かめる・・・フーコーの振り子
フランスの科学者にフーコーという人がいて、振り子を自由にふらせると、時間がたってもはじめと同じ向きにふれるという性質を知っていました。
そこで、大きな振り子をふらせると、地面が動いても振り子のふれる面は、いつも同じ方向になると考えました。
フーコーは、北極で振り子を振らせると、振動面に対して、地面が24時間で1回転するのが見られ、南へ行けば地面の回転がゆっくりとなり、赤道上では地面の回転が止まり、赤道を越えて南へ行けばまた回転(逆向き)が始まり、南極では24時間で地面が1回転するように見えると予想したのです。
そこで振り子を見つめている人(地球と同じ回転をしている人)は、振り子自身の振動面がゆっくり向きを変えているように見えるであろうと考えました。
1852年、フーコーは、ナポレオン3世から、パリのパンテオン大会堂をかりました。
彼は、そこで直径60cm、重さ28kgの鉄の球を、長さ67mの鋼鉄線で教会のドームからつり下げました。
鉄の球の下には、釘をとりつけ、床にしいた砂の上に印をかくようにしたのです。
片側へ引きよせられた鉄の球は、ひもで壁にしっかりと結びつけられました。そして、建物も空気もふるえないように努力がはらわれ、まわりがすっかり静かになったとき、振り子をとめてあるひもに火がつけられました。
ひもが焼き切れると振り子はふれ始め、鉄の球につけられた釘は床にしいた砂の上に印をきざんでいきました。
そのきざみの向きは時間とともに変わっていき、その変化は予想通り、パリの緯度に合ったのです。
地球が自転していることを最初に唱えたのは、今から22世紀も前のヘラクレイデスです。3世紀まえのコペルニクスも同じことを唱えました。その後、2世紀半まえのガリレオ以来、地球の自転を疑う人はいませんでした。
しかし、その証拠となるものはすべて間接的なものであり、実際に地球の自転を実証したといってよいのは、このフーコーの実験でした。
《コペルニクス》
(1473〜1543)地動説で有名なポーランドの天文学者。
(1512年)プロイセンのフラウエンブルク寺院の司教となり、生涯を過ごした。
札幌(北緯43°)では、振り子は、ふれ始めると約6分で角度1°、約1時間で角度10°回転します。1日中ふり続けると2/3周(240°)することになります。