初冬のころ風の強い日に木の枝や電線がピューピューと鳴るのを聞いたことがあるでしょう。16世紀に、イギリスやドイツでは「エオルスの立琴」という楽器がはやっていました。
高さ1メートルの共鳴箱に、太さの違う弦をゆるく張ったものです。これを窓のそばにおくと、風が当って、神秘的な音楽をかなでたそうです。日本の風鈴に似ています。エオルスとは、ギリシャ神話にでてくる風の神です。これらの音は、渦が原因で出る音です。くわしく調べてみましょう。
空気や水のような流体が、柱のような物に当たると、その後ろには渦ができます。水の流れでできる渦をみると、でき方にきまりがありそうです。
水中にある柱に流れが当たると、その後ろに流れが巻きこまれて渦ができます。渦は柱の右側と左側にかわるがわるでき、流れよりも少しおそい速さで流されていきます。渦のでき方は流れの速さ、柱の太さや形、流れるもののねばり気によって変わってきます。
1908年にベナードが渦の写真をとり、1911年にカルマンが理論的に渦の性質について研究をまとめました。それでこのような渦を特にカルマンの渦(列)とよんでいます。
《カルマン》
(1881〜1963)の応用力学者。1911年カルマン渦の理論を立てたほか、境界層理論、等方性乱流理論、高速気流理論、飛行機翼理論など、流体力学、航空力学、弾性論の方向にもすぐれた業績を残しました。
風が強く吹くと、電線がピューピューと鳴るのは、渦が音を出すのではなく、渦により電線が振動するためです。
電線の断面は円形で、風が当たると、風下側に渦ができます。渦のところの圧力が下がり、電線が渦の方へ引きつけられてしまいます。
渦は、電線の上下でかわるがわるでき、このため電線が振動し(ふるえ)、音がでます。